「輸入キッチンと国産キッチンは一体何が違うのですか」と、お客様からよく聞かれます。私共は、国産キッチンは“キッチンを便利な機能を有する設備”として提案しているのに対し、輸入キッチンは“キッチンをこだわりのあるお洒落な生活空間”として提案しているのではないかと考えています。
それでは、その違いはなぜ起きたのでしょうか。私共は、それはそれぞれのマーケット(市場)の違いが関係していると思います。
こだわりの強い
ユーザーに向けて作られた輸入キッチン
では、海外のマーケットでは
誰がキッチンを選んでいるでしょうか?
私共はドイツキッチンと一部のイタリアキッチンしか分かりませんので、限られた話になりますが以下ご説明させて頂きます。
ドイツの場合、最終エンドユーザーがキッチンをインテリアの重要な一部としてとらえ、キッチンを直接選ぶことが多いようです。つまり、キッチンメーカーは住宅関係の業者の方ではなく、最終のエンドユーザーに直接キッチンを選んでもらわなければならないのです。
例えばマンションを購入した場合でも、室内はスケルトン渡しが多く、キッチンを含めた内装はマンションを購入したお客様が自分で内装業者を選び工事を行います。賃貸マンションの場合でも、キッチンは無い場合があり、入居者がホームセンターやキッチンメーカーに依頼をしてキッチンを取り付けます。
では、最終のエンドユーザーはキッチンに何を求めているのでしょうか?彼らは、キッチンを調理場としての機能を有するだけでなく、住宅のインテリアの一部としてとらえ、まるで家具のようなデザイン性を求めています。キッチンとリビングが一体化したオープンキッチンが流行っている昨今ではなおさらです。IHコンロ、ガスコンロ、食器洗い機、オーブンレンジ、冷蔵庫等のビルトインの設備機器があまりそれぞれを自己主張せず、家具としてのキッチンの邪魔にならないよう、控えめで、且つ洗練されたデザインを求められているのも、キッチンをインテリアの一部として捉えているからです。
実際、キッチンメーカーのプログラムを見ると、企業規模の大小を問わず、最終エンドユーザーに選んで頂く為に、非常に多くのキャビネットの種類、ドア、ハンドル、プランを提案しています。工場の生産ラインでは、戸建用キッチンが材料から完成品まで完全にデータ管理され流れており、その管理体制にはいつも驚かされます。
キッチンの販売方法も日本とは異なります。日本ではキッチンメーカーが大きなショールームを抱え、そこでお客様にキッチンを提案し、販売のみを代理店経由で行うことが多いようです。それらのショールームでの経費は全てキッチンメーカーが負担しますので、大きな工場を抱えている国産キッチンメーカーはどうしても大量生産・大量販売が必要になります。
ドイツではキッチンメーカーは直接販売をいたしません。 キッチンメーカーの工場の敷地内に大型ショールームはありますが、基本的には代理店がキッチンのショールームの展開、プランの提案・見積もり・販売を全て自己責任で行います。これは、キッチンが家具としての位置づけであり、それぞれのショールームは家具屋さんの延長線上にあるためです。
キッチンメーカーはこのシステムにより、自社で多くのショールームを抱えお客様に対応する必要がない為に、新製品の開発や商品の製造に経営資本を集中することが出来ます。キッチンメーカーは販売代理店との関係を密にして、自社製品を販売してもらい、お客様からの生の声の収集し、商品の品質改善や開発に生かします。世界各国の主要都市でドイツやイタリアのキッチンショップを数多く展開出来るのはここに理由があります。ドイツのケルンメッセ、イタリアのミラノサローネ等の展示会はキッチンメーカーにとっては、エンドユーザー向けの新作発表が目的ではなく、実は新規の販売代理店の獲得ための商談が主な目的なのです。